「行政書士は食えない」と言われます。
半分は事実です。開業した翌月から電話が鳴る、ということは起きません。多くの人が、最初の数ヶ月をほぼ無収入で過ごします。
ただし「資格に価値がない」という話ではありません。食えない理由は3つに整理でき、そのどれも対処できます。知らずに開業すると詰まる、というだけです。
なぜすぐ食えないのか
① 資格の勉強と、仕事を取ることは別のスキル
試験に出るのは法令です。集客の話は一問も出ません。
それなのに開業した瞬間から、家賃・会費・広告費が発生します。試験に受かった実力と、仕事を取る実力は別物で、後者はゼロから始まります。
これは能力の問題ではなく、そもそも習う機会がなかったというだけの話です。
② 行政書士は「待ちの資格」になりやすい
弁護士や税理士と違い、行政書士には継続的な顧問契約が発生しにくい構造があります。許認可は取ったら終わり、相続も一度きり。
つまり毎月あなたを思い出す理由が、依頼者側にありません。待っていると、本当に誰も来ません。
③ 何の専門か分からないと、紹介が起きない
「行政書士として開業しました」と伝えても、相手は何を頼めるのか分かりません。紹介しようにも、紹介する言葉がない状態です。
「建設業の許可をやっています」と言えば、相手の周りで建設業の話が出たときに思い出されます。この差が、最初の数件を分けます。
最初の1年で起きること

先に知っておくと、落ち込む場所が減ります。
1〜3ヶ月目。ほぼ何も起きません。ここで焦って広告を打ちたくなりますが、まだ何が刺さるか分からない段階なので、費用が無駄になりやすい時期です。
4〜6ヶ月目。挨拶回りや人脈から、最初の数件が入り始めます。この頃に「どんな相談が来るか」が見えてきます。
7〜12ヶ月目。紹介が回り始めるかどうかの分かれ目です。1件目の依頼者から2件目が生まれているかが、いちばん重要な指標になります。
この流れが分かっていれば、3ヶ月目の無反応は想定内です。逆にここで「向いていない」と判断してやめる人が多いのも事実です。
「食えない」の中身を分けて考える
ひとくちに食えないと言っても、詰まっている場所は人によって違います。どこで止まっているかを先に特定してください。
| 詰まっている場所 | 症状 | 打ち手 |
|---|---|---|
| そもそも知られていない | 誰からも連絡が来ない | 挨拶回り/Googleビジネスプロフィール |
| 知られているが頼まれない | 名前は知られているが依頼にならない | 専門を1つ明示する |
| 相談は来るが受注しない | 問い合わせはあるが成約しない | 料金の提示方法/初回対応を見直す |
| 受注するが利益が残らない | 忙しいのに手元に残らない | 単価と、1件あたりにかける時間を見直す |
「集客ができていない」と「受注できていない」は別の問題です。相談が月に数件来ているなら、集客ではなく受注側に原因があります。
ここを間違えると、必要のない広告費をかけることになります。
続く人と、やめる人の違い

実力の差ではありません。行動の順番が違います。
やめる人は、待ちから始めます。ホームページを作り、名刺を配り、問い合わせを待つ。この順番だと、効果が出る前に資金が尽きます。
続く人は、攻めから始めます。前職や知人に挨拶し、他士業を回り、数件受ける。そこで分野が見えてから、待ちの仕組みを作る。
もう1つの違いは、判断の早さです。やめる人は3ヶ月で判断します。続く人は、待ちの手段には半年かかると分かっているので、その間に攻めで食いつなぎます。
やりがちな失敗
開業と同時にホームページを作る
順番が逆です。何の相談が来るか分からない段階で作ると、内容が「何でもやります」になります。そのサイトは誰にも刺さりません。
詳しくは「行政書士にホームページは本当に必要か」で書いています。
事務所を借りる
自宅を事務所にできる場合、最初は借りないほうが安全です。固定費が上がると、判断が焦ります。焦った判断は、単価を下げる方向に向かいがちです。
資格を追加する
行政書士だけでは不安だから、次の資格へ。勉強している間、集客は止まります。資格は増えても、仕事を取る実力は増えません。
単価を下げて受ける
最初の1件が欲しくて相場より安く受ける。その依頼者はその金額の相手として定着しますし、紹介される相手も同じ価格帯になります。最初の値付けは、後々まで残ります。
最初の3ヶ月でやること

やることは絞れます。費用のかからないものから順に手をつけてください。
とくに挨拶とGoogleビジネスプロフィールの登録は、この時期にやらない理由がありません。どちらも0円で、片方は即日から動きます。
まとめ
- 「すぐ食えない」は事実。ただし理由は3つに整理できる
- 資格の勉強と集客は別のスキル。習う機会がなかっただけ
- 行政書士は顧問契約が発生しにくく、待つと本当に誰も来ない
- 専門が分からないと、紹介する言葉がないので紹介も起きない
- 1〜3ヶ月目はほぼ何も起きない。これは想定内
- 続く人は攻めから始める。待ちの仕組みは、分野が見えてから
- 開業と同時のHP制作・事務所を借りる・資格の追加・単価を下げるは、いずれも順番として早い
よくある質問
Q. どれくらいの資金を用意すべきですか。
登録費用のほかに、生活費の半年分を見ておくと判断が焦りません。攻めの手段は0円で始められますが、売上が立つまでの時間は必要です。
Q. 兼業のまま開業してもいいですか。
問題ありません。むしろ収入の下支えがあるほうが、単価を下げずに済みます。焦って安く受けるより、兼業で時間をかけたほうが結果的に早いことがあります。
Q. 何件くらい受ければ食べていけますか。
単価と分野で変わるため一概には言えませんが、単価を上げるほうが件数を追うより早いのは確かです。安い案件を大量に回すと、時間が尽きて集客が止まります。
Q. まず何から始めればいいですか。
前職や知人への挨拶です。費用0円で、その日から動けて、いちばん反応が早い手段です。全体像は「行政書士の集客方法まとめ」にまとめています。
