「ホームページって、作ったほうがいいですか」
ホームページを作る会社なので、当然「必要です」と答えると思われるのですが、実際には「まだ作らなくていいです」と答えることがあります。
順番を間違えると、費用をかけたのに誰も見ないサイトができあがるからです。しかも、そういうサイトは直すより作り直したほうが早いことが多く、二重にお金がかかります。
この記事では、今すぐ要る人と、まだ要らない人を分けます。そのうえで、作るならいつか、最低限なにを載せるかまで書きます。
分かれ目は「依頼者が自分で探す分野か」
必要かどうかは、事務所の規模でも開業年数でもありません。扱う分野で決まります。

相続の相談者は、まず検索します。「地域名 相続 行政書士」と打ち込んで、出てきた事務所を3つほど見比べます。このとき何も出てこない事務所は、比較の土俵にすら乗りません。
一方、車庫証明を自動車ディーラーから継続で受けている事務所は、依頼者が検索して探してくることはありません。ここにサイトを作っても、問い合わせは増えません。
同じ「行政書士」でも、依頼者のたどり方がまったく違うのです。
ホームページには2つの役割がある
もうひとつ、混同されやすい点があります。ホームページの仕事は1つではなく、2つあります。
① 見つけてもらう(集客)
検索やGoogleマップから、知らない人に見つけてもらう役割です。効き始めるまで3〜6ヶ月かかります。
② 信じてもらう(受け皿)
すでにあなたを知っている人が、依頼する前に確認する役割です。こちらは公開した日から効きます。
多くの人が①だけを期待して、②を軽く見ています。実際に効きが早いのは②のほうです。
というのも、紹介で名前を聞いた人も、交流会で会った人も、名刺を受け取った人も、ほぼ全員が一度は検索するからです。そこで何も出てこない、または情報が古いままだと、そこまで積み上げた印象がその瞬間に薄まります。
これは集客の失敗ではなく、すでに手にしていた機会の取りこぼしです。
まだ作らなくていい人
1. 依頼者が検索して探さない分野
ディーラー経由の車庫証明、業界内の紹介で回っている産業廃棄物、地元の付き合いで動く農地転用。こうした分野は、検索の入口がそもそも細いです。
サイトを作るより、紹介元との関係を厚くしたほうが早い段階です。
2. 扱う分野がまだ決まっていない
これがいちばん多い失敗です。
分野が決まる前に作ると、載せる内容が「建設業許可から相続まで幅広く対応します」になります。読んだ人からは「何でもやる人=何も専門がない人」に見えます。
先に数件受けて、どんな相談が来るのかを掴んでから作ったほうが、書くべき内容が定まります。
3. 載せられる実績がまだゼロ
実績や事例が1つもない状態で作ると、どうしても資格と経歴の紹介だけになります。それでも受け皿としては機能しますが、急いで作る理由にはなりません。
今すぐ要る人
1. 個人が依頼者になる分野
相続・遺言、在留資格、離婚協議書。依頼者が個人の場合、ほぼ必ず検索されます。しかも「知らない人に自分の家庭の事情を話す」ため、事前にどんな人か確認したがります。
2. 比較検討される分野
会社設立、補助金申請。ここは複数の事務所を並べて比べられます。比較表に載らなければ、選ばれる以前の問題です。
3. すでに紹介で回っているが、取りこぼしを感じている
「紹介はもらえるが、その後の連絡が途切れることがある」。この場合、受け皿がないことが原因かもしれません。①の集客ではなく、②の役割が必要な状態です。
無いことで損をしている瞬間
「問い合わせが増えないから意味がない」と言われることがあります。ただ、サイトが無いことによる損は、増えない形ではなく“減る”形で起きます。気づきにくいのはそのためです。
実際に起きているのは、こういう場面です。
紹介された直後。 「あの人に聞いてみたら」と言われた相手が、あなたの名前を検索します。ここで何も出てこないと、紹介の熱が一段下がります。紹介した側の顔も少し立たなくなります。
Googleマップで見つけた直後。 地図から事務所を見つけた人が、詳細を確認しようとします。リンク先が無いと、そこで比較検討から外れます。
名刺を渡した後。 その場では話が弾んでも、後日あらためて調べたときに情報が無いと、依頼の検討まで進みません。
いずれも集客の失敗ではなく、すでに手にしていた機会の取りこぼしです。だから「紹介だけで回っている」事務所ほど、実は損失が見えにくくなります。
分野ごとの必要度
分野を「依頼者が自分で検索するか」と「他社と比較されるか」の2軸に置くと、必要度がはっきりします。

右上に近い分野ほど、ホームページがないと機会を落とします。左下の分野は、後回しでも当面困りません。
複数の分野を扱っている場合は、いちばん右上にある分野を基準に判断してください。
作るなら、最低限これだけは
作ると決めたら、まず埋めるべき項目があります。デザインより先です。

意外に思われるかもしれませんが、問い合わせの有無を分けるのは、写真とデザインより「誰がやっているか分かるか」です。顔写真、事務所の場所、登録番号。この3つが抜けているサイトは、それだけで候補から外れます。
★まだ埋めていません:実際に制作した事務所で、顔写真や実績を載せた前後で問い合わせがどう変わったか。具体例が入ると強くなります
→ 費用の目安は「行政書士のホームページ制作費用の相場」、自作と外注の判断は「自作(Wix)と制作会社どっちが得」で書いています。
いつ作るのがいいか
開業と同時に作る必要はありません。おすすめは、開業から3〜6ヶ月、または受任が10件を超えたあたりです。
その頃には、どんな相談が来るか、どの分野が自分に向いているかが見えています。そこで初めて、書くべき内容が決まります。
ただし例外があります。上で挙げた「今すぐ要る人」に当てはまる場合は、開業と同時に用意してください。個人向けの分野は、サイトがないと最初の1件が発生しません。
なお、Googleビジネスプロフィールの登録だけは、開業初日にやっておいてください。費用0円で、地図検索に出るようになります。サイトを作るまでの間、当面の受け皿になります。
まとめ
- 必要かどうかは事務所の規模ではなく、扱う分野で決まる
- 依頼者が自分で検索して探す分野なら必須。紹介中心の分野なら後回しでよい
- ホームページの役割は「見つけてもらう」と「信じてもらう」の2つ。後者は公開初日から効く
- 分野が決まる前に作ると「何でもやります」になり、誰にも刺さらない
- 目安は開業3〜6ヶ月、または受任10件。個人向け分野だけは開業と同時に
- 作るなら、デザインより先に顔写真・所在地・登録番号を埋める
よくある質問
Q. SNSがあれば、ホームページは要りませんか。
分野によります。ただしSNSは、アカウントが凍結されたり、運営の方針が変わると積み上げが消えます。土地を借りている状態に近いので、依頼につながる情報はサイト側に置いておくほうが安全です。
Q. 事務所のブログだけでもいいですか。
ブログは②の受け皿としては弱いです。記事は読まれても、「この人に頼んでいいか」を判断する情報(顔・場所・料金・登録番号)が揃っていないためです。ブログを書くなら、その土台としてサイトが必要になります。
Q. 費用をかけずに始められますか。
始められます。Googleビジネスプロフィールは0円です。簡易な自作ツールも選択肢になります。判断基準は「分野が決まっているか」で、決まっていない段階なら、費用をかけない選択が合理的です。
Q. 作ったのに問い合わせが来ません。
多くの場合、①の集客が効いていないだけで、②の受け皿としては機能しています。集客側は、Googleビジネスプロフィールとブログを組み合わせて育てる領域です。手段の全体像は「行政書士の集客方法まとめ」にまとめています。
