行政書士の開業費用は、2つに分かれます。
① 登録にかかる費用 … 登録しないと仕事ができないので、避けられません。
② 営業のための費用 … ここは削れます。そして多くの人がここで使いすぎます。
先に大事なことを書いておきます。金額は都道府県の行政書士会ごとに違います。この記事の数字は目安なので、必ず所属予定の会に確認してください。会のサイトに記載されているか、電話で聞けば教えてもらえます。
① 登録にかかる費用
避けられない費用です。主な項目はこの4つです。
| 項目 | 性質 |
|---|---|
| 登録免許税 | 国に納める。全国共通 |
| 登録手数料 | 日本行政書士会連合会へ |
| 入会金 | 所属する会により大きく異なる |
| 月会費 | 毎月発生。年額で見ておく |
幅が出るのは入会金です。都道府県によって数万円から20万円台まで差があります。ここを調べずに予算を組むと、想定が崩れます。
あわせて、登録には事務所要件の確認があり、会によって事務所の調査が入ります。自宅を事務所にする場合、鍵のかかる書類保管場所などが求められることがあります。これも会ごとに基準が違うので、事前に確認してください。
月会費は毎月かかり続けます。売上がゼロの月も出ていくので、年額で把握しておいてください。
② 営業のための費用
ここが本題です。同じ「開業」でも、この部分で総額が何倍も変わります。

最小限で始めても、仕事は取れます。むしろ開業直後は最小限のほうが安全です。理由は記事02でも書いたとおり、固定費が上がると判断が焦るからです。
焦った判断は、ほぼ必ず「単価を下げる」方向に向かいます。
要るもの・要らないもの

まず要るもの
印鑑(職印) … 業務に必要です。会の規定に沿った様式で作ります。
名刺 … 挨拶回りで使います。専門分野を入れてください。入っていないと覚えてもらえません。
パソコンとプリンタ … 申請書類は紙が多いので、複合機があると楽です。
書類の保管場所 … 鍵のかかるもの。守秘義務の実務上、必要になります。
業務用の連絡先 … 携帯でも構いませんが、固定電話があると信用が上がる場面があります。
後回しでいいもの
事務所を借りる … 自宅でできるなら、最初は借りないほうが安全です。月々の固定費が判断を狂わせます。
ホームページ … 分野が決まる前に作ると「何でもやります」になります。詳しくは「行政書士にホームページは本当に必要か」で書いています。
業務ソフト … 案件が回り始めてからで間に合います。最初はエクセルで足ります。
Web広告 … 何が刺さるか分からない段階で投じると、ほぼ無駄になります。
車 … 分野によりますが、必須ではありません。
削ってはいけないところ
節約すべきところと、してはいけないところがあります。信用に関わる部分は削らないでください。
名刺 … 数千円です。ここを安く済ませても得はありません。専門分野が入っていない名刺は、作り直すことになります。
書類の保管 … 鍵のかかる場所。守秘義務に関わるので、ここは削れません。
顔写真 … スマホでも構いませんが、「無い」のは削りすぎです。士業は誰に頼むかで選ばれます。撮り方は「行政書士のプロフィール・顔写真の作り方」で書いています。
賠償責任保険 … 任意ですが、業務上のミスに備えるものです。会を通じて加入できる制度がある場合があります。加入の可否と内容は、所属会に確認してください。
逆に削っていいのは、見た目や設備の部分です。立派な事務所や高性能なパソコンは、依頼の獲得にほぼ影響しません。
いちばん見落とされる費用
生活費です。
開業費用の計算に入れない人が多いのですが、売上が立つまでの数ヶ月をどう食いつなぐかが、実際にはいちばん重要です。
記事02で書いたとおり、最初の3ヶ月はほぼ何も起きません。生活費の半年分を見ておくと、判断が焦らずに済みます。
この余裕があるかないかで、単価の付け方が変わります。余裕がないと、最初の1件を取るために相場より安く受けてしまい、その価格が後々まで残ります。
お金をかける順番

順番を間違えると、効かない場所に使うことになります。
開業時 … 登録費用と、名刺・印鑑などの最低限だけ。
数件受けてから … 来る相談が見えてきたら、そこに合わせてホームページや必要な設備へ。
軌道に乗ってから … 事務所、業務ソフト、広告。売上が読めるようになってからで間に合います。
補助金は使えるか
小規模事業者持続化補助金など、ホームページ制作や広告費が対象になりうる制度があります。
ただし要件や対象経費は年度ごとに変わり、公募回によっても異なります。また、開業直後は申請の要件を満たさない場合もあります。
使えるかどうかは、その年の公募要領で必ず確認してください。商工会議所や商工会に相談すると、申請の支援も受けられます。
まとめ
- 開業費用は「登録にかかる費用」と「営業のための費用」に分かれる
- 金額は都道府県会ごとに違う。とくに入会金の幅が大きいので、必ず所属予定の会に確認する
- 月会費は売上ゼロの月も出ていく。年額で把握しておく
- 営業側は最小限でいい。固定費が上がると判断が焦り、単価を下げる方向に向かう
- 要るのは印鑑・名刺・PC・保管場所・連絡先。名刺には専門分野を入れる
- 事務所・HP・業務ソフト・広告は後回しでよい
- いちばん見落とされるのが生活費。半年分あると判断が焦らない
- 補助金は制度が毎年変わる。その年の公募要領で確認する
よくある質問
Q. 総額でいくら見ておけばいいですか。
登録費用は会によって差があるため、まず所属予定の会に確認してください。そのうえで、営業側は最小限なら数万円で始められます。それより生活費の確保のほうが重要です。
Q. 自宅を事務所にできますか。
多くの場合できますが、会によって事務所要件の基準が異なります。書類の保管方法や、生活空間との区分について確認が必要です。賃貸の場合は、契約で事務所利用が認められているかも確認してください。
Q. 開業前に準備しておくべきことは。
専門にする分野を考えておくことです。決まっていると、名刺の文言もホームページの内容も定まります。判断の基準は「行政書士の差別化戦略」で書いています。
Q. 兼業で始めても費用は同じですか。
登録費用は同じです。ただし兼業のほうが生活費の心配が少ないため、単価を下げずに済むという利点があります。開業直後に何が起きるかは「行政書士は開業してもすぐ食えない?現実と対策」にまとめています。
