行政書士と会社員の兼業はできるか

行政書士と会社員の兼業はできるか 行政書士合格後の情報

私は2025年度の行政書士試験に合格して、いまも会社員を続けています。産業廃棄物を扱う会社で営業をしています。

合格したあと、まわりから何度も聞かれたのが「会社を辞めるのか」でした。

辞める以外の選択肢を、誰も前提にしていないという感じでした。でも実際には、兼業という形があります。

ここでは制度の話よりも、実際に何が壁になるのかを整理します。

制度としてはできます

まず前提です。行政書士法に、兼業を禁止する規定はありません。

弁護士や税理士のような厳しい制限もないため、会社員をしながら登録している人は実際にいます。

ただし例外があります。公務員は原則としてできません。国家公務員法・地方公務員法に兼業の制限があるためです。この点は資格の問題ではなく、公務員という身分の問題です。

そして本当の壁は、法律ではないところにあります。

壁①:勤務先の就業規則

ここがいちばん多い。副業を禁止している会社は、まだ珍しくありません。

就業規則に「許可なく他に雇用されない」「事業を営まない」といった条項があると、登録そのものが問題になります。

合格したら、まず自社の就業規則を確認してください。行政書士会に聞くより先です。

許可制になっている会社も多いので、その場合は申請して通るかどうかの話になります。

壁②:平日の昼に動けない

これが実務上いちばん重いと思っています。

役所は平日の昼しか開いていません。

許可申請の窓口、補正の対応、問い合わせの電話。依頼者から連絡が来るのも、平日の昼です。

会社員をしていると、この時間がまるごと塞がっています。

 兼業ができる人とできない人の条件を、制度・勤務先・時間の3つで比較した表

壁③:事務所の要件

行政書士として登録するには事務所が必要で、その要件は所属する行政書士会の規程によります。

自宅の一室を使う場合、独立性や他の用途との区別について定めがあることがあります。

ここは会ごとに違うので、必ず所属予定の会に確認してください。ネットの情報は、別の会の話かもしれません。

兼業に向く分野と、向かない分野

全部の分野が同じ条件ではありません。平日の昼にどれだけ動く必要があるかで、だいぶ違います。

取扱分野を、平日昼の対応がどれだけ必要かと、期限の固さの2軸で配置した図

向きやすいもの

期限に余裕があり、書類中心で進むものです。

更新手続きのように、何ヶ月も前から分かっている期限なら、平日に休みを取って1〜2回動けば足ります。

相続関係の書類収集も、郵送で進められる部分が多くあります。

向きにくいもの

依頼者が急いでいる分野です。

飲食店の開業、イベント前の許可、入管の在留期限が迫っている案件。「今週中に」が発生する種類の仕事は、会社員をしながらだと受けきれません。

そして受けきれないまま受任すると、依頼者に実害が出ます。ここは正直に断るべきところです。

相談対応の時間をどうするか

兼業でいちばん詰まるのが、最初の電話に出られないことです。

対策は3つあります。

時間を先に明示する。 「平日19時以降と土日に対応します」と書いておけば、合わない人は最初から来ません。断られるのではなく、合う人だけが残ります。

最初の接点をフォームにする。 電話よりメールやフォームのほうが、時間差で返せます。問い合わせの入口をフォームに寄せる設計にしてください。

折り返しの時間を書く。 「翌営業日中にご連絡します」と明示があれば、待てます。何も書いていないと、待っている間に次を探されます。

→ 「行政書士のHPで問い合わせを増やす方法」

収入をどう考えるか

兼業の良いところは、単価を下げなくていいことです。

生活費が給与で賄えていると、焦って安く受ける必要がありません。そして最初の値付けは、後々まで残ります。

→ 「行政書士が単価を上げる方法」

専業で始めると、どうしても早く数を取りたくなります。その結果、安い依頼で埋まって、単価を上げる余裕がなくなる。この順番は後から直しにくい。

兼業は件数が伸びない代わりに、値付けを間違えにくいという利点があります。

始めるときの順番

兼業で行政書士を始める手順を、確認・準備・受任開始の3段階で示した図

確認を先に全部済ませてから動くのがコツです。

就業規則を確認せずに登録まで進むと、あとで止まります。会の規程も同じです。

そして最初から分野を絞ってください。兼業は使える時間が限られているので、何でも受ける形にすると回りません。

→ 「行政書士の差別化戦略」

兼業のまま続けるという選択

「いずれ専業に」と考える人が多いのですが、兼業のまま続けるのも選択肢です。

会社の仕事で業界に接していると、その業界の話が分かります。私の場合は産業廃棄物で、許可を取る側の事情が内側から見えています。

これは外から勉強して得られるものではありません。

→ 「産業廃棄物許可の行政書士の集客」

専業になることが上位互換とは限らないと思っています。

まとめ

  • 行政書士法に兼業を禁止する規定はない。ただし公務員は原則できない
  • 実際の壁は勤務先の就業規則。合格したらまず自社の規則を確認する
  • 次に重いのが平日の昼に動けないこと。役所も依頼者も平日に動く
  • 事務所の要件は所属会の規程による。必ず会に確認する
  • 向くのは期限に余裕があり、書類中心の分野。向かないのは急ぎが発生する分野
  • 相談対応は時間を明示・フォームを入口に・折り返し時間を書くの3つで回る
  • 兼業は件数が伸びない代わりに、焦って単価を下げずに済む
  • 兼業のまま続けるのも選択肢。勤務先の業界が、そのまま専門になることがある

よくある質問

Q. 会社に知られずに登録できますか。

おすすめしません。行政書士名簿は公開されるため、調べれば分かります。就業規則に反していた場合、あとで問題になるのは自分です。許可制なら、先に申請してください。

Q. 副業禁止の会社ですが、どうすればいいですか。

まず禁止の範囲を確認してください。「雇用されること」を禁止していても、「事業」は許可制という会社もあります。就業規則の文言次第なので、人事に確認するのが確実です。

Q. 事務所は自宅でもいいですか。

所属する行政書士会の規程によります。独立性や表示について定めがある場合があるので、登録前に必ず確認してください。賃貸の場合は、契約上の用途制限も確認が必要です。

Q. 兼業だと依頼者に不信感を持たれませんか。

隠すと不信になります。先に「平日19時以降と土日に対応します」と書いておけば、それを前提に依頼が来ます。問題は兼業であることではなく、連絡が取れないことです。

Q. 登録せずに待つ選択はどうですか。

それも選択肢です。判断の分かれ目は「行政書士に合格したら登録すべきか」で整理しています。

作るべきか、まだ待つべきか。
そこだけでもはっきりします。

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