この記事は、少し立場が違います。
私は産業廃棄物を扱う会社で、新規営業の側にいます。行政書士ではありません。つまり許可を依頼する側の会社の内側にいる人間として書いています。
産廃許可を扱いたい行政書士に向けて、依頼する側が何に困っていて、どういう事務所に頼みたいと思うのかを書きます。手続きの解説ではありません。
産廃許可は、なぜ行政書士の仕事になるのか

構造的な理由が3つあります。
① 期限を落とすと事業が止まる
産業廃棄物の収集運搬業許可は、5年ごとの更新です(優良認定を受けている場合は7年)。
そして更新を落とすと、その自治体で仕事ができません。契約している排出事業者への収集に行けなくなります。トラックも人も動かせません。
「手続きが遅れる」のではなく「売上が止まる」という性質の期限です。だから危機感が強く、専門家に任せる判断がされやすい。
② 自治体ごとに許可が必要
これが業界の外から見えにくい部分です。
収集運搬業は、積む場所と降ろす場所の両方の自治体の許可が必要になります。つまり複数の県をまたいで運ぶ会社は、許可を複数持つことになります。
5つの自治体に許可があれば、更新の時期が5回バラバラに来ます。社内で管理しきれなくなるのは、この構造のためです。
③ 管理の担当が決まっていない
ここがいちばん大きいと思います。
許可の期限を、社内で誰が見ているか。総務なのか、営業なのか、現場の責任者なのか。中小の産廃会社では、これが曖昧なことが珍しくありません。
「誰かが見ているはず」の状態で走っていて、更新の2ヶ月前に慌てる。こういう場面が実際にあります。
ここに行政書士の価値があります。書類を作る作業ではなく、期限を管理して先に連絡してくれることに価値があります。
依頼する側は、何で選んでいるか

正直に書きます。依頼する側は、法令の知識量を測れません。
測れないので、別のところを見ています。
「産廃に強い」と書いてあるか
いちばん大きいです。「行政書士業務全般」の事務所には頼みません。
理由は不安だからです。産廃は自治体ごとに様式が違い、積替え保管があるかで要件が変わります。一般的な行政書士に頼んで、差し戻されるのが怖い。
だから「産廃許可を専門にしています」と書いてあるだけで、候補に入ります。逆に書いていなければ、探されもしません。
業界の言葉が通じるか
問い合わせの電話や最初の面談で、こちらの説明を通訳しなくて済むか。
「積替え保管あり」「4トン平ボディが3台」「マニフェストは電子」。こういう言葉が普通に通じる相手だと、話が早いと感じます。
逆に一から説明が必要だと、「この人に任せると自分の手間が増える」と判断されます。
期限を管理してくれるか
「更新の時期にこちらから連絡します」と言われると、それだけで頼みたくなります。
前に書いたとおり、社内で誰が管理するか曖昧なので、そこを引き受けてくれる相手には価値があります。金額より、ここで選ばれることがあります。
見ていないもの
ホームページのデザイン。きれいかどうかは見ていません。
見ているのは「産廃をやっているか」と「連絡がつくか」です。凝ったサイトより、専門と電話番号がはっきり書いてあるほうが選ばれます。
どこから依頼が来るか

業界の横のつながりが強い
産廃業界は、同業のつながりが濃いです。組合があり、地域の集まりがあり、元請と下請の関係があります。
つまり1社取ると、横に広がる可能性が高い。逆に1社で悪い評判が立つと、それも広がります。
紹介で回る比率が高い分野です。
検索で探す会社もあります
中小の会社は検索します。顧問の行政書士がいない会社が、更新の時期に「産廃 許可 更新 行政書士」と調べます。
一方、規模の大きい会社はすでに顧問がいます。そこに割り込むのは難しいので、顧問のいない中小を狙うほうが現実的です。
処理施設の営業から漏れてくる
産廃会社の営業は、排出事業者を回っています。その過程で「うちも許可を取りたい」という相談を受けることがあります。
つまり産廃会社の営業担当と関係を作ると、そこから依頼が流れる可能性があります。行政書士が回る先として、意外に見落とされています。
集客をどう組むか
分野が決まっているので、やることは絞れます。
① サイトに「産廃専門」と書く
トップページの1行目です。「行政書士事務所」ではなく「産業廃棄物許可を専門とする行政書士事務所」。これだけで検索の当たり方が変わります。
② 自治体名を出す
「兵庫県・大阪府の産廃許可に対応」のように、対応する自治体を明記してください。収集運搬は自治体ごとの許可なので、依頼者は自分の自治体に対応しているかを確認します。
③ 期限管理を前面に出す
「更新の時期にこちらからご連絡します」。これを料金表に含めてください。記事17で書いたとおり、継続の入口になります。
④ 組合・同業の集まりに顔を出す
紹介の比率が高い分野です。Webだけでは取り切れません。
まとめ
- 産廃許可は5年更新。落とすと事業が止まるので、危機感が強い
- 収集運搬は自治体ごとに許可が必要。複数持つと更新時期がバラバラになる
- 社内で誰が期限を管理しているか曖昧な会社が多い。ここに価値がある
- 依頼側は法令の知識量を測れない。見ているのは「産廃に強いか」「業界の言葉が通じるか」「期限を管理してくれるか」
- サイトのデザインは見ていない。専門と連絡先がはっきりしているほうが選ばれる
- 業界の横のつながりが濃い。1社取ると広がる
- 狙うのは顧問のいない中小。大手はすでに顧問がいる
- サイトには「産廃専門」と対応自治体を明記する
よくある質問
Q. 産廃の実務経験がなくても扱えますか。
扱えますが、最初の数件は慎重に進めてください。自治体によって様式や運用が違い、積替え保管の有無で要件が変わります。分からない点は事前に自治体に確認する前提で受けてください。
Q. どの自治体を対象にすべきですか。
まず自分の地域と、隣接する自治体です。収集運搬は「積む場所と降ろす場所」の両方が必要なので、隣接自治体に対応できると依頼が増えます。
Q. 産廃会社にどう営業すればいいですか。
組合や地域の集まりが確実です。あわせて、都道府県が公表している許可業者の一覧から、更新時期が近い会社を絞ることもできます。方法は「行政書士の営業・テレアポのやり方」で書いています。
Q. 産廃は顧問契約にできますか。
向いている分野です。5年更新に加えて、変更届や実績報告があります。期限を管理して連絡する形の契約が成立しやすいです。詳しくは「顧問契約・リピートの取り方」で書いています。
