私は2025年度の行政書士試験の合格者です。
その年の試験は合格率14%超・合格者数7,000人超で、過去10年間で2番目に高い合格率でした。
この数字が出たあと、「合格率を10%台に戻すべきだ」「合格者が増えすぎると食えなくなる」という声が上がりました。
自分がその「増えた7,000人」の1人です。だから書きにくい話でもあるのですが、そのうえで思うことを書きます。
▲ この記事はこちらの動画をもとに作成しています。あわせてご覧ください。
2025年の試験結果
受験者数は約5万人。そこに対して合格者数が7,000人を超え、合格率は14%台になりました。
この数字を見て「試験が簡単になったのでは」という意見が出ました。
ただ、受験者数自体も5万人と多く、合格者数が増えた背景には複数の要因が絡んでいます。単純に「簡単になった」とは言い切れません。
なぜ合格率が上がったのか

難易度が下がったという見方もありますが、実態はやや違うと思っています。
一般知識に「取りやすい問題」があった
2025年の一般知識では、ディープフェイクに関する出題がありました。
この分野は近年メディアで頻繁に取り上げられています。日頃からニュースを見ていた人にとっては、取り組みやすい問題だったはずです。
180点付近に受験者が集中している
行政書士試験には、ボーダーライン付近に受験者が密集しやすい構造があります。
そこに多くの受験者がいる中で、一般知識に取りやすい問題が1問加わるだけで、合格者数が大きく動くことがあります。
今回の7,000人超は、こうした要因が重なった結果だと見ています。
難易度自体は、長期では上がっている
20年前の過去問と現在の問題を比べると、行政法や民法の問われ方がより複雑になっています。
「安易に合格できるようになった」とは言えません。
記述式の採点でよほど極端な操作がない限り、マークシートで170点以上取れている人が記述で大きく崩れるケースも考えにくいと思います。
受験者層が底上げされている可能性
行政書士試験は、弁護士・司法書士の予備試験と出題範囲が一部重なっています。
法律系の上位資格を目指す人が腕試しとして受験するケースもあり、受験者層の質が底上げされている可能性もあります。
「10%に戻せ」論をどう見るか

この議論の背景には、既存の行政書士が競合の増加を懸念しているという側面があります。
その気持ち自体は、分からなくはありません。
ただ、この議論には抜けている視点があります。
> 「依頼する人にとって何が良いか」という視点です。
選択肢が増えるのは、依頼者にとって良いこと
私は産業廃棄物を扱う会社で営業をしていて、許可を依頼する側でもあります。
その立場から言うと、選べる相手が多いほうが助かります。
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料金が合うか
専門分野が合っているか
連絡が取りやすいか
話が通じるか
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この4つで選びたいのに、選択肢が少ないと妥協することになります。
→ 「産業廃棄物許可の行政書士の集客」
公の場で言うことの影響
競合が増えることへの警戒を公の場で発信すると、これから合格する人に否定的なメッセージが届きます。
既得権益を守ろうとする姿勢は、士業全体の見え方にとってもプラスになりません。
依頼する側から見ると、内輪で競合の数を気にしている業界は、あまり頼もしく見えません。
合格者が増えることは本当に問題か
行政書士は、官公署への書類提出を代理できる国家資格です。
民法・行政法を体系的に理解した人が社会に増えることは、それ自体に意味があります。
簡単な試験ではありません
自分が受けたので言いますが、行政書士試験は決して簡単ではありませんでした。
働きながら、限られた時間で民法・行政法・憲法・商法・一般知識という広い範囲を学ぶ必要があります。
運転免許と同列に語られることもありますが、試験の性質はまったく違います。
不合格だった人の努力を軽く見ることになる
「合格者が増えすぎた」という議論は、今年惜しくも届かなかった人の努力を軽く見ることにつながります。
何年もかけて勉強を続けている社会人の受験者は多くいます。その積み重ねに敬意を持つことが、士業としての品格だと思います。
「食えなくなる」は、人数の問題ではない
これは構造の話です。
食えるかどうかは、合格者数ではなく、個々がどれだけ価値を提供できるかで決まります。
そして行政書士は、もともと待っていると仕事が来にくい構造を持っています。これは合格者数とは関係ありません。
向き合うべきは競合ではなく依頼者

長く続けるために必要なのは、参入障壁を高めることではありません。
選ばれ続ける存在になることです。
そのために効くのは、この3つだと思っています。
① 伝える力。 難しい法律を、依頼する側に分かる言葉で説明できるか。業界の言葉が通じるかどうかで、こちらの構え方が変わります。
② 絞ること。 どんな専門家として覚えられているか。「業務全般」では、頼む側は何を頼めるか分かりません。
→ 「行政書士の差別化戦略」
③ 見つけてもらう仕組み。 必要としている人に、オンラインで届くか。
→ 「行政書士の集客方法まとめ」
とくに開業直後は、知名度も実績もゼロからです。競合の人数を気にしている余裕は、実際のところありません。
私たちが行政書士専門のWeb制作をしているのも、ここに理由があります。良い仕事をする人が、必要としている人に届いていないことが多いからです。
まとめ
- 2025年の行政書士試験は合格率14%超・合格者7,000人超。過去10年で2番目の高さ
- 背景には一般知識の出題傾向・180点付近への集中・受験者層の底上げなど複合的な要因がある
- 長期では難易度は上がっている。「安易に合格できるようになった」とは言えない
- 「10%に戻せ」論には、依頼する人の視点が欠けている
- 依頼する側は料金・専門分野・連絡の取りやすさ・話が通じるかで選びたい。選択肢は多いほうがいい
- 公の場で競合の増加を警戒すると、士業全体の見え方が悪くなる
- 「合格者が増えすぎた」は、届かなかった人の努力を軽く見ることになる
- 食えるかどうかは人数ではなく、提供する価値で決まる
- 必要なのは伝える力・絞ること・見つけてもらう仕組みの3つ
よくある質問
Q. 2025年の試験は簡単だったのですか。
一概には言えません。一般知識に取りやすい問題があったことと、ボーダー付近への集中が重なった影響が大きいと見ています。長期的には難易度は上がっています。
Q. 合格者が増えると、仕事は減りますか。
人数より、何を専門にしているかのほうが影響します。絞っていない事務所同士は比べられますが、分野を絞ると比べられる相手は大きく減ります。
Q. いま合格しても遅いですか。
遅くありません。むしろ、これから何を専門にするかを決める時間があります。合格後の判断は「行政書士に合格したら登録すべきか」で書いています。
Q. 実務経験がないまま開業して大丈夫ですか。
登録と開業に実務経験の要件はありません。ただし分野の選び方で難易度が変わります。「行政書士に合格したが実務経験がない」で整理しました。
Q. 試験制度の最新情報はどこで確認できますか。
総務省または各都道府県の行政書士会の公式情報をご確認ください。この記事の数字は公表された結果に基づくものですが、制度に関する最新の内容は必ず一次情報で確認してください。
この記事について
2025年度の行政書士試験に合格した筆者が、公開された試験結果と自身の受験経験をもとに書いています。試験制度に関する最新情報は、総務省または各都道府県行政書士会の公式情報をご確認ください。
